標本

詞・曲:頭慢

海辺で貝殻を集める
貝殻は孔が空いたり欠けたりしてる
それでも貝殻を集める
汗をかきながら真剣な目をして拾う

男は自分の部屋に戻り
黒い天鵞絨(ビロード)のクロスの上にそれを並べる
それを眺めてため息をつく
貝殻はかつて辿った記憶の標本

タカセガイの光沢は
張り付いた殻の下
欲望や後悔に埋もれてしまった
ヤコウガイの眩さは
自分では光らない
誰かの愛を受けて明日を照らすのか

男はそっと標本を手に取る
螺旋を指で辿れば内側は外側(そと)に
迷宮の外側は記憶の内側(なか)
砂が溢れて部屋じゅうに響く無音

タカラガイの中にある
大切な思い出は
幻想かリアルかもうわからない
スイジガイが守るのは
他愛もない真心か
明日死ぬとも限らない自分でいいから

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