選ばなかった未来へ

詞・曲:頭慢

明け方に見た夢の中で あの時さよならをしたあの人が
知らない街で 誰かの後ろ姿を見送っていた

日々はなにかを選ぶことの いつもいつもいつもその繰り返し
そうして選ばなかった世界がまたひとつできあがる

でももしかしたら様々な未来は人の心の奥にあって
いま目の前にひろがる海はただひとつの海かも知れないなんて
それならば息を止めてこの海に心の全てゆだねれば
別の世界に住む僕やあなたと ふと出会えるかも知れないなんて

選ばなかった未来に 今存在している僕よ
あなたの暮らしはどうですか 僕と同じくらいに幸せに生きてますか

あの日からあなたは知らない 僕があなたの知らない誰かと
ふるさとを離れてこんな場所に暮らしていることも

同じように僕は知らない 違う道を選んだ僕が
別の世界のどこかであなたと一緒になっていることも

選ばなかった未来に 今存在している僕よ
あなたの暮らしはどうですか 僕と同じくらいに幸せに生きてますか

きっと世界中の人の心の奥は深い場所でつながってて
僕の全然知らない世界も 時空をこえてつながってて
それならばこころの海の奥をどこまでもたどってゆけば
別の世界に住む僕やあなたとまた出会うかも知れないねなんて

選ばなかった未来の 今日の天気はどうですか
今はめぐりあうことも無いけど また今日も一日 好い日でありますように

選択は決して自分の将来を決めることではなくて
限りない多重世界をまたひとつ生成してゆくこと
その世界に新たな 意思を持って生きるとき
周囲の世界は新たな 意思と共に 生まれる
そして大丈夫あなたが 選ばなかった世界も
ちゃんと存在していてあの子もそこで暮らしているから

選ばなかった未来の 今日の天気はどうですか
あなたの暮らしはどうですか 僕と同じくらいに幸せに生きてますか

カレーをつくる

詞・曲:頭慢

夕飯を食べようと思った
ご飯は炊いてある
ノリタマでもかけて
ご飯を食べるだけでもいいと思った
お皿をテーブルに用意した時
ふとカレーを食べたくなった
カレーを食べたくなった

カレーをつくろうと思った
人参玉ねぎジャガイモは買ってある
ジャガイモは皮をむいて
大きめに切って水につける
玉ねぎと人参を切ったら
玉ねぎの量が多すぎると思った
かまわず鍋をあたため油を引いた

多すぎる玉ねぎをいためた
茶色くなるまで炒めるのが好きだ
たくさんあった玉ねぎがしんなりとして
体積を小さくしていく
夢中になって鍋をかき混ぜてると
ふとお肉が無いと気づいた
肉が無いと気づいた

肉を買いに行こうと思った
買い置きのポークランチョンミートでという手もある
しかしやっぱりお肉いっぱいの
カレーを食べたいと思った
玉ねぎの鍋のレンジの火をとめて
お肉を買いに外に出た
マックスバリューへ向かった

まよって鶏肉を買った
豚肉とどちらにするか迷った
鶏肉だけ買って帰ろうと思ったのに
梨をひとつ買ってしまった
家に帰って鶏肉を切り
カレーづくりを続行した
カレーづくりを続行した

お肉がなければ買いにいく
気がついた時に行動すればいい
まずは欲望にまかせて
行動を開始すればいいと思う
そして足りないもがあったら
後から考えればいい
後から考えればいい

それがここでの生き方
煮込むこと20分
幸せまで20分

石敢當

詞・曲:頭慢

南の島で生まれて南の島でそだった
今もこの小さな島でひとり暮らしている
コンビニもイオンもツタヤもあるけど
まるで都会の真似事の田舎のような街

たくさんの観光客が訪れる島
その中にあの人あの人と出会った

リゾートホテル近くの誰もいない浜辺で
そっとはじめてのはじめてのキッスをした

南の島で生まれて南の島でそだった
島の外には一度も出た事がない私
つぎに来るのはいつ何度もLINEの文字を
指でたどるだけの哀しい一方通行

たくさんの観光客が訪れる島
毎年あの人あの人と会う日を待ってる

だけどもわかっているの私をこの島から
あの人が連れ出してくれる日は来ないだろう
誘っても私の部屋に来てくれないあの人
なぜなら私の家につづく角には石敢當

標本

詞・曲:頭慢

海辺で貝殻を集める
貝殻は孔が空いたり欠けたりしてる
それでも貝殻を集める
汗をかきながら真剣な目をして拾う

男は自分の部屋に戻り
黒い天鵞絨(ビロード)のクロスの上にそれを並べる
それを眺めてため息をつく
貝殻はかつて辿った記憶の標本

タカセガイの光沢は
張り付いた殻の下
欲望や後悔に埋もれてしまった
ヤコウガイの眩さは
自分では光らない
誰かの愛を受けて明日を照らすのか

男はそっと標本を手に取る
螺旋を指で辿れば内側は外側(そと)に
迷宮の外側は記憶の内側(なか)
砂が溢れて部屋じゅうに響く無音

タカラガイの中にある
大切な思い出は
幻想かリアルかもうわからない
スイジガイが守るのは
他愛もない真心か
明日死ぬとも限らない自分でいいから

コーヒーサンバ

詞・曲:頭慢

3つ穴が開いてるカリタ1つ穴ならメリタ

生まれて初めてのコーヒーはネスカフェ
親戚のおばさんに入れてくれと頼まれ
何にも知らない僕はスプーン山盛り3杯
おばさんは美味しいと何度も言ってくれた

高校に入って喫茶店に行くようになった
ちょっと不良で大人の気分になった
当時制服で行くと怒られる店があった
本を読んだり物書きしたり今もコーヒー一杯で

3つ穴が開いてるカリタ1つ穴ならメリタ
フィルターのさきっちょが尖ってるのがハリオ
サンバサンバコーヒーサンバ
一口飲めば夢の花が咲く

都会でサラリーマンしてた頃には毎朝
会社の駅に着いたら朝カフェなうしてた
今でもときどきお気に入りのカフェで
13階からの眺めとコーヒーの午後

若いころには喫茶店で女の子と
向かい合ってコーヒーとメロンソーダ
どきどきしたり笑ったりお話したり
後悔したり黙ったりそんなコーヒーの思い出

3つ穴が開いてるカリタ1つ穴ならメリタ
サイフォンで淹れるのはちょっと気取った感じ
サンバサンバコーヒーサンバ
一口飲めば夢の花が咲く

おうちで自分で淹れるコーヒーは
富田佐奈栄せんせい直伝のペーパードリップ魂込めて
いつもおんなじやりかたなのに味がちがう不思議
うちの奥さんが淹れてくれることがないのも不思議

3つ穴が開いてるカリタ1つ穴ならメリタ
フレンチプレスで淹れるコーヒーはデリケート
サンバサンバコーヒーサンバ
一口飲めば夢の花が咲く