南の島に雪が降る

詞・曲:頭慢

窓ガラスの向こうに冬の雨
ぼんやり遠くを見てる
赤瓦の下月桃の葉に
雫が落ちてゆれてる

どうしてだろうふいに昔の
記憶がよみがえる
それは私が生まれ育った
山並みに囲まれた町

あなたと初めて 手と手つないで
歩いた初市の日の
帰り道に降り始めた雪が
記憶の中でゆれてる

思い出はもう幻になる
だんだん幻に
窓の向こうの景色もいつか
幻のように見えてくる

今はこの島に暮らして
自分の居場所も見つけたけど
変わらないもの

窓の向こうは幻になる
幻を重ねて
幻の中あの人とまた
めぐり合いたい
幻の中南の島に
南の島に雪が降る

 

雨の川平湾

詞・曲:頭慢

グラスボートのガラス越し
海の底に眠る未来は
魚たちが行き交う向こうに
今は手が届かない

なるようになるさと生きてきた僕と
理由のないことのできない君は
こんなとこで暮らしたいと
言った僕を笑うだけ

最低の結末は迎えたくはないから
君を連れ南の島に来て
違う場所からの三角測量

ヨーンの道を抜けて
日の当たる場所へ行きたかったのに
マレビトに優しくない
雨の川平湾

僕らの重ならない波動は
電波望遠鏡から発射されて
厚い雲の向こう側
ダークマターに吸い込まれる

僕らが住む街では季節外れの青いシャツが
雨の中で風に吹かれて
それがとてもとても似合っているよ

強い風に耳を
塞がれて勘違いをしてるのか
行き詰った二人の目に
雨の川平湾

ヨーンの道を抜けて
日の当たる場所へ行きたかったのに
マレビトに優しくない
雨の川平湾

都会から来た人は

詞・曲:頭慢

都会から来た人は高校時代からの友だち
一番旧くからの僕の親友

都会から来た人はかつて生まれて初めて飲む酒を
まったく酒の飲めない僕の前で飲んだ

都会から来た人はある日一冊の本を僕に読ませて
自分はゲイだと僕に打ち明けた

都会から来た人は下町の建て替え不能な一軒家を買って
今は若い男と住んでいる

都会から来た人は日本で一番の大学を出て
地方の大学教授をしてとても羨ましい人生を送ってた
とっても羨ましい人生を送ってた

都会から来た人は僕と妻に会いに島に来て
そしてとっても特別な事を僕等に打ち明けた

都会から来た人は明日都会に帰ってゆく
もう会えないかも知れないね、いやまた会おう

今日も一日、好い日でありますように
明日も一日、好い日でありますように

猫のイーヴン

詞・曲:頭慢

机の上に雑誌を広げていると
君はその上に乗っかってくる
雑誌の上は居心地がいいんだよね
君の言いたいことはわかる

君の意見は僕とは違う
君は猫だしそれは仕方がない
それでも君の意見を認めよう
だから君も聞く耳を持ってほしい

ふと顔を上げてみるとテレビジョンで
どっかの国際ニュースが始まった

僕の大切な皮製のカバンに
君はバリバリと爪を立てる
そこは爪とぎに気持ちがいいんだね
君の言いたいことはわかる

君の意見は僕とは違う
君は猫だしそれは仕方がない
それでも君の意見をリスペクトする
そうやって一緒に暮らしていこう

ふと傍に目をやると広げたままの
地方新聞の見出しが目にとまる

さしみ屋

詞・曲:頭慢

かみやーき小の並びにある
星野商店の隣にある
看板の無いさしみ屋が
おまえの好きだった店

そんなことを今になって
おまえの友達から教えられた
知らなかったよおまえの事は
全て知ってるつもりだったのに

かみやーき小の並びにある
星野商店の隣にある
看板の無いさしみ屋が
おまえの好きだった店

一緒に居た頃にあたしが
見ていたおまえは所詮
痩せたアタマの中で作った
おまえでしかなかったのかい

かみやーき小の並びにある
星野商店の隣にある
看板の無いさしみ屋が
今日も店を閉ざしてた

遠い所で今頃きっと
おまえはさしみなんかつまんでさ
笑いながら島酒を飲み
楽しくやってることだろうね

かみやーき小の並びにある
星野商店の隣にある
看板の無いさしみ屋が
今日も店を閉ざしてた

たどり着けない店
たどり着けないおまえの心