名前をもらった


詞・曲:頭慢

子供の頃と言えば教室の隅っこの席で
消しゴムかすまるめてるような子供だった

国語の成績が少し良くて運動はぜんぜんだめで
バスに乗ればすぐ乗り物酔いするような子供だった

そのとき僕は名前をもらった
そのとき僕は名前をもらった
そして僕は親につけられた名前だけが名前じゃないと知った

大学卒業したばかりのその女の先生は
授業で外にバッタ採りに連れってってくれた

放課後僕は一人でその先生の仕事を
じゃましながらいつまでも残って遊んでた

そのとき僕は名前をもらった
そのとき僕は名前をもらった
そして僕は新しい名前がとてもとても気に入ってしまったんだよ

やがて子供の時代を過ぎ社会の波にさらされて
でもそのときもらった名前は忘れなかった

様々な集団や立場で僕は色んな名前を持つ
それを使い分ければいいと学んだあの時

そのとき僕は名前をもらった
そのとき僕は名前をもらった
そして僕はいろんな名前を持っていろんな場所で生きていった

歳をとって違う場所で暮らすようになった今も
色んな名前の中にあの頃の名前は忘れないよ

でも僕が死んでしまえば誰かの記憶の中に
その名前が少しだけ残ってくれたらいいさ

そのとき僕は名前をもらった
そのとき僕は名前をもらった
そしてそのときもらった名前はいつまでも記念碑のように

終らない夏の終り

詞・曲:頭慢

風の向きが変わって
南の島にも秋が来たことを知る
いつまでも続くと思っていた夏の終り

テリハボクの葉陰で
北の街で生まれ育ったあなたと
いつのまにか心よりそっていた夏の初め

ひと夏の恋なんて もう若くもない男と女
将来のこともあぶくのような夢を追えもしない

それでも俺がはぐらかすようなこと言えば
あなたは泣いてしまうかな
二人とも青春の季節を疾うに過ぎても
夏の終わりは終わらない

アダンの茂みをぬけて
着いたビーチに置きざらしのカヤック
いつまでも続くと思っていた夏の終り

少しぶっきらぼうに
返事を返したことを後悔して
いつのまにか気になってしまってた夏の初め

夏休みのドリルは もう子供じゃない男と女
バナナシェイクの上に描く言葉を選べない

それでも俺がつないだ手を握り返さなければ
あなたは焦りだすのかな
二人とも青春の季節を疾うに過ぎても
夏の終わりは終わらない

右脳と左脳のダンス

詞・曲:頭慢

男と女 石器時代に刻まれた遺伝子同士
あなたの右手と私の左手と・・

あなたは遠くから私の白いシャツに気がついてた
でもわたしはすれ違うときときに初めてあなたに気づいた
君を遠くからずっとずっとずっと見ていたんだよ
でも近づいたら歩くことに夢中で通り過ぎてしまった

男と女 石器時代に刻まれた遺伝子同士
あなたの右手と私の左手と
右脳と左脳が手と手と手と手を取り合って
くるくるダンスを踊ろうよ

あなたは遠くをいつもいつもいつも見ていたから
そばにいる私の憂鬱に気づかなかった
君は例えばテーブルクロスのほつれなんか気にして
遠い将来の暮らしの事なんか気にかけなかった

男と女 石器時代に刻まれた遺伝子同士
君の両手と僕の左手と
右脳と左脳が手と手と手と手を取り合って
くるくるダンスを踊ろうよ

おしゃべりな私は話しながら考えるから
二人の関係は浮かんでは消える
君の話を聞き流しながら
僕はひとつづつ示すべき結論を考えてた
いい雰囲気を作ったら
美味しいものを食べて
火を焚いて 花を贈って
踊ろうよ チョコレートとシャンパン

男と女 石器時代に刻まれた遺伝子同士
あなたの右手と私の左手と
右脳と左脳が手と手と手と手を取り合って
くるくるダンスを踊ろうよ

動物たちの武器(とくに猫)

詞・曲:頭慢

ライオンは生きるために爪と牙を磨く
コブラは生きるために毒を貯めている
ガゼルは生きるために素早く逃げる足がある
ハコガメは生きるために硬い甲羅に身を隠す

僕たちは生きるために どんな武器を持ってるだろう
信じるもののために祈ること 科学文明を極めること
未来を予測すること 過去を綴り伝えること
誰かを愛すること 誰かを殺すこと

ふと傍で体を伸ばして寝ている猫に
お前の武器はなんだと聞いてみたら
猫は片目を開けてあくびをしながら
ニャアと一言鳴いた

飼い猫は生きるために爪と牙を隠した
飼い猫は生きるために素早く動かなくなった
でも時々野生に帰り何かを追いかけるけど
飼い猫は生きるために飼い主に愛される

僕たちは生きるために どんな武器を持ってるだろう
愛するもののために身を投げうつこと 宇宙の始まりと終わりを知ること
自分が何者かを考えること 自分が何者でも無いとわかること
何かを愛すること 何かを失うこと

ふと傍で体を伸ばして寝ている猫に
お前の武器はなんだと聞いてみたら
猫はこちらにすり寄ってきて
チュールが欲しいと鳴いた

この海をあなたに

詞・曲:頭慢

最近仕事帰りには少し遠回りして
海に行くんだ
海辺を歩くたび新しい何か発見があって
毎日が新鮮な暮らしだよ

新しい友だちもたくさん出来てわたし
きっと顔つきだって変わったと思うんだ
ふるさとに残してきたひとたち
そしてあなたのこと・・思い出すけど

今透き通ったコバルトブルーの海を見ても
大きな雲がゆっくり空に動くのを見ても
珊瑚の海に色とりどりの魚が泳ぐのを見ても

幾重にも重なり響く波の音を聴いても
風の中に微かな潮の香りを感じても
みんなあなたに教えたいと思っているんだよ

あのねあの頃はいつもあなたに教えてもらう
ばかりの日々だった
でもね今はきっとあなたが見てる以上の世界が
わたし見えるようになったんだよ

新しい言葉もたくさん覚えてわたし
きっと喋り方だって変わったと思うんだ
ふるさとに残してきたひとたち
そしてあなたのこと・・ほんと言うとね

今波打ち際サイダーみたいな波を見ても
コケティッシュなヤドカリのフォークダンスを見ても
大きな葉っぱの南の草木が揺れるのを見ても

背中の木々から色んな鳥の声を聞いても
さらさらした宝石のような砂の感触も
みんなあなたに教えたいと思っているんだよ